ある友人がいる~なぐりあいの愛・トラウマとの付き合い方上級者編~
ある友人がいる。
高校2年生で知り合った、とても変わった性格の女性だ。
彼女は私と誕生日が二日違いで同じ水瓶座だが、だからと言って性格が似ているわけではない。
水瓶座はエキセントリックと言われるが、彼女は正統派のエキセントリック・ウーマンである。
その友人に会いに、5月の連休中に宮城県から車をぶっとばして静岡県まで行った。
食に対する執着が強く、(本人の表現なので悪口ではない)好奇心旺盛がゆえあちこち色んなジャンルに興味は持つが、頭でっかちで好奇心の発露がズレでいる。(これは私の評価。)
富士山の見える閑静な別荘地のような場所に一軒家を借りて、ねこのような性格の天使なヨークシャー・テリアと暮らしている。
わんこの名前はニコライ(笑来)。
私はてっきりロシア皇帝の名前からとったと思い込んでいたから、そうではなく、「笑来」
(わらいが、くる)という由来を聞いて好感を持った。
日柄は悪く、生憎の雨で富士山は見えなかったが、私が見ることが出来ずとも有難い富士山は常に存在しているのだから、何も悲観することなどない。
宿泊施設の調理場に長年勤務していた際、繁忙期を乗り切る為に体のメンテナンスをストイックに実践していた彼女なのだから、あまりジャンキーなお土産は渡したくない。
だが、絶対に料理オタクの彼女は沢山の食事を提供してくれるに違いないので、私の好物をさりげなく混ぜて私の町の有名なメーカーの笹かまぼこ、牛タン、隣町が製造元のクロレラ入りお刺身こんにゃく(酢味噌つき)をチョイス。
これくらいヘルシーなら何かは気に入るだろう。というより、彼女が食べ物を粗末にするはずがないのだが。
そして、どうしても我慢できない福島県銘菓、柏屋のまんじゅう。
私の大好物。
途中の守谷サービスエリアで買った小腹減り用の栗トッツォ(マリトッツォの栗版)も、食べる暇がなかったので持参。
なかなかとっちらかった内容のお土産である。
着くや否や、夕飯には半端な時間だったのでおやつを出してくれる。
私のために焼いていていてくれた、ベイクドチーズケーキ。地元の柑橘を綺麗にむいてくれたもの。ナッツ類。アボカドにオリーブオイルを和えたもの。そして、持参した笹かまぼことまんじゅうを美しくカットしたもの。
のちに目利きの知人が言うには、カトラリーはロイヤルアルバートとのこと。
お茶はハーブティー、紅茶、緑茶、etcと聞かれ、私はアールグレーをリクエストして出してもらう。
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もうガチなのである。
私はまんじゅうはそのままかじるし、厚い皮の柑橘は自分でむくくらいなら食べないという選択をする。
本当に、こういうところ心底尊敬する。
近所日帰り温泉でゆっくりあたたまり、いよいよ宴。
お酒はチャミスル、マッコリ、赤ワイン、カヴァがあるよとオーダーを聞いてくる。
彼女は最近カヴァ(スペインのシャンパーニュ製法を用いたスパークリングワイン)がお気に入りとのこと。
彼女の料理を思う存分食べたい私は発泡性のお酒は遠慮して、飲み慣れてるチリ産の赤ワインを所望する。案の定あるんだな、これが。私は好みが限定されすぎているが、ベーシック故、そういったものは大体彼女は所有している。
綺麗に盛られたつまみが出るわ出るわ。
炭水化物は用意してないから、食べたいときは言ってね。米は発酵玄米だよ、炊かないとないから要るなら早めに教えて、ピザも出来るよ、パスタは?だの。
忙しい忙しい。
私は食いしん坊の類いではあるが、彼女から言わせると全然小食だね、とのこと。
いやいや、お喋りが忙しすぎて箸が遅いだけだ。
食べるのは大好きだけれど、そりゃあ貴女のようにはそんなにいちいち食べ物のことは考えてないわ。だって夕食が終わる前から明日の朝何食べる?だもの。
1日目の夕飯は炭水化物は辞退して、目の前の沢山の種類のつまみと呼ぶにはいささか手のかかりすぎてる品々を胃に収めることに注力することにした。
私は食いしん坊だが、会話が過ぎると小食になる性質である。
話す口と、食べる口が区別できないのだ。
朝食ミーティングだのパワーランチだの出来るビジネスパーソンとはほど遠い。そんな生活をしたらきっと、月に5kgはすぐ落ちるだろう。
お土産に持参したクロレラ入りお刺身こんにゃく(酢味噌つき)は特に喜んでくれた。
なるほど、こういう嗜好なのね。メモメモ。覚えておこう。
彼女には幼少期からのトラウマがある。
ゼロ歳児から4歳児時代の記憶が鮮明にあり、そのときの体験が、自分の人生を生きようとする選択の際に彼女の邪魔をする。
思考を暴走させては過去を乗り越えるために、何度も何度も反復してつらいことを思い出しては越えられないトラウマの前にひれ伏しているのだ。
私なんぞは、越えられないハードルは越えなくていいと思うし、
わざわざ嫌なことはみつめない方がいいと思う。
思い出すことで追体験を繰り返すから、なるべく見ないようにする。
そして、痛くなくなってから刺激しないように扱う。
どうやっても解消できないことは鍵をかけて頭の隅に追いやるのだ。
彼女ほど過酷な経験はしていないが、私は多感な思春期と東日本大震災の際そういった教訓とはいえない程度の処世術を学んだ。
あまりにも囚われているものだから、こんな意見は何の慰めにはならないとは思いつつもこれしか言えることはなかった。
沢山考えて解消することばかりではないと。だったら考えない方が賢明だと。
理論的思考や知性で解消しようとすればするほど結局は感情的にそのトラウマの渦に溺れているような気がする。
それが囚われるということなのだろうけど。
さて、そんな会話が出るということは私はやはり彼女には信頼されている。
何も出来ないが聞くこと位は一所懸命してあげたい。
私を見込んで難しい話をしてくれるのは嬉しいがそんな話をしながら食欲も飲酒欲も薄れない彼女は逆に凄い。
決して繊細ぶるわけではないが、私はこういうとき食が細くなる。
所詮私はカウンセラー向きではない。
セラピストにもなれない。
傷ついた思春期、私はそういったものになりたいと思った時期があった。
結局一番に救いたいのは自分だった。
誰も自分を救えない。本当に自分を救えるのは自分しかいない。そう17歳で悟ったからには、自分自身に関しては動揺しなくなったのだが、やはりこれは他人には応用出来ない。
無力なのである。
抽象的な悩みはあくまで抽象的な方向でしか解決出来ないのだから、具体的な解決を何十年も模索してる彼女には多くは語れまい。
(本人にとってはもちろん抽象的な悩みなどではなく、具体的な心的外傷である。)
私が偶にクールだねとひとから言われるのはこういった線引きがどんなに親しい相手にも適用されるからなのだ。
結論。今が幸せじゃないから過去に囚われていることを重要視してるのではないか。
そしてその結論はブーメランなのである。
私自身にも還ってくるから恐ろしい。
ああ、こういうこと考えるのって本当に消耗する。
今を無難に感情を波立てず生きることに注力している私には強烈なブーメランだった。
いつの間にか私の話にすりかわり、何やら不穏な空気になる。
私は親しい人に愚痴ったりぼやいたりするのは好きだが、解決する為の議論やセッションは苦手なので、触れて欲しくない、という姿勢になってしまう。
親しいからと言って、そういった踏み込まれ方をすると拒絶反応が起き、態度が悪くなってしまうのだ。
だって、私はただ楽しいご飯が食べたいだけなのに。
心からの善意、親切でもどうしても拒絶反応が起きる。
人間は悪意には反抗できるが、愛には逆らえないという言葉をどこかで聞いたが、まさにそれ。
親切に私を思ってくれていてのことなのに、喜んで受け止められない自分の傲慢さに苛立って、相手に苛立ちが伝わってしまう。
最後の方は喧嘩腰のようになってしまい、嫌な雰囲気になるが、双方とも頑固で自分の主張は絶対曲げない上に言葉を駆使すれば理解できると頑張ってしまうため、頑張りすぎてしまったようだ。
私は、彼女相手だけではなく、他の親しい相手ともこうなりやすい。
なので、極力どんなに親しい相手とも長時間過ごさない方がいいな、と毎回学習するのだが、喉元過ぎればすっかり忘れて、泊まりに行っていい?なんて繰り返す。
つまり、学習してるようで遊びの誘惑に弱いから繰り返してしまう。
正しいとか間違いは関係ない。
親しくて、気を許す相手だと話しても理解を得られないことが絶対あるということをどうやら忘れてしまい夢中になってしまうようだ。
ただ阿呆だから、適当に相手に合わせて納得した振りをして譲歩するっていうことを忘れてしまう。会話に夢中になればなるほど。
この辺が年を重ねれば重ねるほど悪化している気がする。
嫌だわ。老害かしら。ほんと、若い人相手にするときは特に気をつけなくちゃ。
2泊3日過ごして、2日目の夜なんかは私の温さに呆れたのかほぼ喧嘩を吹っかけられて険悪な雰囲気になったのだが、嘘を吐いても仕方ないから本音で返したために喧嘩になったのだから仕方ない。
結果的に耳に痛いことはお互いに大人になればなるほど言ってくれる相手が居なくなるから、有難たいという結論にお互い達したので、何とか穏便に最終日を迎えた。
全力で向かってくる相手って久しぶりだ。
彼女は全力で人に向かう。
私はエネルギーが不足しているので全力では向かわない。そんなことしたら、日常生活を送る力まで使い切ってしまい次の日に差し支えて仕様が無い。ただ私は阿呆だから忘れて夢中になって差し支える。
ほんと疲れるこの性格。
それが温いと責められたとて、体力の問題なのだから大目に見てほしい。
癒やしの写真をここで。私はやりたいことが沢山あったのだが、どうにも力尽きてお昼寝した2日目の昼。天使が乗ってきて癒やしてくれた。
あの子、ほんと天使。癒やしてくれてありがとう、笑来。
さて、この旅のまとめに入ろう。
道中沢山寄って来た(上は常磐道、下は東北道)サービスエリアで買った、どこに旅行行ったんだか分からない散り散りの土地柄のラインナップのお土産ものの話をここで紹介。
横濱ハーバー。(横浜)
全部知ってる味。大好物。なので静岡行ったとか何も気にせずのチョイス。
いいのよ。美味しければ。
2日目に行った御殿場のアウトレットで結局第一目的のメゾン・マルジェラは長蛇の列で入れなかった。30分くらい並んで、あ、これだめなパターンだ、と見切りをつけ、ゴディバのショコラリキサーダークチョコレート72%で自分を慰める。
これさえ摂取しとけば、何も買えなくてもご満悦。と自分のご機嫌取りに。
そして不思議な店構えの吉田のうどん(友人宅の付近のご当地うどん)のお店。
吉田のうどんは山梨県富士吉田および同市を含む山梨県郡内地方を中心として食べられる郷土料理とのこと。
日本一固い麺と誰が言ったか言われている、まさに、丸亀製麺を食べ慣れた東北人からすると、ものすごいカルチャーショックの食べ物だった。
吉田のうどんは色々あれども、食いしん坊な友達はこのお店が推しとのこと。
内装も昔の飲み屋というか、スナックを改装したようで、名残が面白い。
(内装の写真は撮り忘れた。男の隠れ家的な雑誌のバックナンバーが沢山あり、男の聖地だった雰囲気がありありと伝わる店内でした。)
写真は肉天うどん。お出汁は醤油が勝ちぎみ。東北のしょっぱい味が好きな私は出汁が強いのより好きかも。
素朴な田舎うどんという風貌とお味。
歯ごたえが凄すぎてお腹がいっぱい。大盛りにしなくてよかった。
友達が食べてた山椒ごはんも味見させてもらった。山椒ご飯も美味しかった!!
他にも沢山語るべきことはあるのだが何せ今回の話のタイトルは「ある友人がいる」
である。
彼女の話をメインにするとして、今回の旅の話はここで終わりとする。
なんだかんだと言って30年近くの縁を持つこととなった彼女。
彼女に幸あれ。