読書の秋。
ということで、前回は私の読書を好きになった経緯と、影響を受けた漫画作品、そしてミステリ小説やそれらにまつわる作品たちについて割と熱く語った。
ミステリに続いては歴史もの。
これは私の読書愛を語る上で外すことは出来ない。
さて。始まりは何の作品だったか。
高校2年生の頃。
悩みのないところから悩みを作り出すような、自分で墓穴を掘っては埋め繰り返すような能率の悪い思考をしていた頃だ。
もう不細工な自分自身を見つめる作業はうんざりだ。
心底ネガティブな毎日を送っていた私。
そんな私を慰めてくれたのは、心優しい友でもなく、理解のある大人でもなかった。
(とてもいい友人達には恵まれていた。されど私は、自分の思考をつきつめ結論を出したい人間。優しい慰めや、適切な大人のアドバイスは納得がいかなければ受け入れない頑固人間である。安易な共感や慰めなどいらぬ。それは高校時代から顕著であった。)
具体的な解決方法ではなく、現実逃避を願っていた私に打ってつけ。
そう、それは壮大な長編歴史小説である。
確かそれは、今でも親交のある友人Mが貸してくれた小説だった。
(その友人については、「ある友人がいる~なぐりあいの愛・トラウマとの付き合い方上級者編~」という記事で紹介したことがある。リンク先↓)
https://blog.hatena.ne.jp/satomi_mignon/satomi-mignon.hatenablog.com/edit?entry=4207112889902580313
何か読みたいなあ、とぼやいていたら、その友人が学校まで持参して貸してくれたのが
「ブルボンの封印 藤本ひとみ著」
である。
藤本ひとみ氏は、分厚い文芸書(失礼な表現?でも、上記の作品は凄く字が細かくてページが多かったから)を書いているが、経歴としてはティーンのライトノベルで絶大な人気を誇っていた人らしい。
らしい、というのは、高校生だった私が読んでいたリアルタイムでは無くて、私の年代の少し上で大ブレークしていた様なのだが、私がその渦を実感する場所にたまたま巡り合わせがなかった。
結構アニメ映画化なんかもされていて、後に中古で買ったノベルのあとがきに、バレンタインにはノベルの登場人物宛にトラック数台分でチョコレートが届くような熱狂ぶりだったと書いてあった。
ジャニーズタレントと同等である。
私が読み始めた頃にはライトノベルから撤退?卒業?されていて、私が出会ったような難しい歴史小説に力を入れていた時期だったのかと思われる。
同氏の大人向けの文芸書を一通り読んだ後は興味が涌いて、高校近くの古本屋さんに通ってせっせと中古のライトノベルを買って読んだときは、
(もの凄い巡り合わせなのだが、そこには同氏のラノベ作品がほとんど揃っていた。もの凄い冊数だったので5冊くらいずつせっせと買っていた。定期的に通ったら古本屋のおじさんと仲良くなってしまった。その場所は駅前だったので、土地開発が進んで無くなってしまったがおじさん、元気かな)
ティーン向けの軽い物でも歴史やトリックや人物の背景の描写がすごく緻密で、作家の方に対して失礼だが綿密に取材してるんだな、元々歴史大作を書きたくてそのステップとしてティーン向け小説からデビューした方なんだろうな、と思った。
ちなみにライトノベルのジャンルは、推理ミステリー物あり、歴史ファンタジーあり、プロレスものあり、中学受験ものあり、ピアニストものあり、あと何だっけ?もっと色々あった。
(どれもちゃんと小学生~高校生女子主人公なのだから、すごすぎる。ちゃんとリアリティがあってかつ突拍子もないものって、相当描写力がないと書けないと思う。どれもちゃんと面白かった。じゃなければ感想が今でも書けるくらい内容を覚えてないと思う。)
最近会った他の友人に、私が高校時代に突拍子もない内容のライトノベルを貸してくれたことがあったんだけど、なんか、バンドの追っかけとか出てくるヤツ?という話をされて、
???私、そんな軽薄な内容の(失礼)ラノベだったらこっそり一人で(ヲタク認定を避けるため)読むから貸さないと思うけど、心当たり全くないなあ。この時期ライトノベル(失礼)なんて買ってなかったし。
と思ったのだけれど、それって今思えば古本屋でちまちま買っていた藤本ひとみ氏のライトノベルだったかも知れない、と思い出した。
前回のミステリ小説の記事を書いていたときに、呼び水となって古い記憶が芋づる式に呼び覚まされた。
一見突拍子もない内容の少女向けの本なんて、私が持っていた中ではこれしか心当たりがない。
脇道にそれたが、そういったわけで藤本ひとみ氏の分厚い歴史大作とティーン向け小説は私の高校時代の読書から切っては切り離せない話となる。
さて、初めて読んだ分厚い(しつこい。だって、あれ以上分厚い本は当時読んだことがなかったから。)歴史大作「ブルボンの封印」とは。
イギリス領ジャージィ島で育った領主の嫡男(養子である)の青年と、その青年が4歳の頃フランスで拾って、ジャージィ島に一緒に連れ帰った出自不明の女の子が、大人になって自分の出生の秘密を解き明かしていく物語である。
このように書くと突拍子もない(しつこい。)のだが、ガチの歴史小説である。
さらに説明すると、
舞台は17世紀。ジャージィ島からフランスへ。
フランスのルイ13世が亡き後、わずか4歳で戴冠した力のない国王のルイ14世が
摂政リシュリューの後を継いだ摂政マザランと母后アンヌ・ドートリッシュが牛耳るフランス王宮を、太陽王ルイ14世として奪還する華麗なる逆転劇である。
(この作品では軽快だったが、他の歴史本を読むと次の摂政として国政を牛耳るはずだったのフーケの失脚が結構可哀想だった。
結構ルイ14世の嫉妬故の濡れ衣かも、なんて思う。でも、権力に近いと王手を獲るために巻き込まれるのよね。
勝ち取らないと沽券と自尊心に関わるのでそりゃあルイ14世だって死ぬ気で権力を奪還するわ。
権力のない王族なんていいこと何もないもの。
勢力争いの勉強になる。)
ここからフランス王朝ブルボン家は親政を行い絶対王政で華麗にフランスを牛耳っていく。
湿った陰気なパリに華やかなヴェルサイユ宮殿が築かれ貴族の社交の中心地となるのもこの頃。
(衛生観念は最悪なので、夢を見たい方はこの時代の貴族社会の風呂・トイレのことは忘れよう。)
後のルイ16世がフランス革命で権利を奪われるまで華やかな黄金期は続く。
その始まりの物語である。
ひとことで書くとこんな感じ。
ちなみに「ブルボンの封印」は宝塚で舞台化もされたらしい。
絶対宝塚に合いそうな内容!!!
リアルな話をすると、フランスのブルボン家のルイ14世は、4歳から即位して在位期間が72年。
これは「中世以後の国家元首として最長の在位期間を持つ人物」としてギネスで認定されている。
最近お隠れになったイギリスの女王・エリザベス2世は1952年から2022年が在位期間で70年。これはもう少しでギネスが塗り替えられる位の大変な期間だったのね。
きっと、その次に長いのは我が日本の昭和天皇の64年かな?(調べてないけど、そうだったらいいなと思ってこれ以上追求しないことにしている。)
歴史ある皇室を戴く国に生まれ、私は大変誇らしい。
そこから鑑みてもルイ14世時代の黄金期といったら凄まじい。
(もちろん後半は落ち目もあった。戦争ばかりしていたので。)
長い黄金期の終わりには、昭和が終わったときと同じような感覚を当時のフランス人は味わったのかな?
「ブルボンの封印」に戻るが、これは、相当のスケールとページ数であった。
これを読み切った後には、どんな長編小説が来ようと読み遂げられる自信が相当付いた。
以降、歴史小説は同作家も相当読んだが、他の作家やノン・フィクションも精力的に手を出していく。
それだけをとっても、この本が私に残した功績は大きい。
誤解を恐れず言うと、旧時代の戦争と政治の話は大変面白い。
面白く読める時代としては、自分の中では「日露戦争」位までがギリ。
これが第一次世界大戦~太平洋戦争時代だったりするとリアルすぎて凄惨なのでとても読めやしない。
旧時代の戦争話は単に文明が滅びる、侵出(あえて侵略とはいわない)や政治や旧体制が新体制に入れ替わる為の通過儀礼としてクールに読める。草民の迷惑など考慮する余地がなく大変読みやすい。
歴史大作を読むと脳のアドレナリン放出半端ない。
ずっとマリオがスターを獲ったときの音楽が流れているような状態である。
欝の人は、躁になれちゃうかもよ(逆にヤバい?)
私は日が沈むさま(没落)を描いた歴史小説や漫画が大好きではあるが
(例:ヴァロワ王朝からブルボン王朝になる変換期、泥沼のカトリックとプロテスタントの戦争話やフランス革命話)、
日が昇る前の戦い(黎明期から黄金期になるまで(例:幕末から明治維新の話))も好きだ。
没落よりは黎明期である後者の方が希望がある。もちろん。
だけども始まりは終わりの話と切っては切れない。
終わりにはロマンがある。
終わり(絶対的な王者没落する話)に惹かれてしまうのは、終わりの始まりから始まりの始まりを同時に味わえるからなのかも知れない。
さて、「ブルボンの封印」は間違いなく私に歴史小説の素晴らしさを教えてくれた作品なので、語れるところは沢山在るのだが、ネタバレは避けたいので多くは言えない。
ただ、アレクサンドル・デュマの「鉄仮面」をベースにしたハリウッド映画、「仮面の男」の内容と通じる物がある。
鉄仮面伝説とルイ14世の話をベースにした恋と勢力抗争の物語である。
映画「仮面の男」は知ってる方も多いのではないかな?
まだアイドル的人気だった、レオナルド・ディカプリオが主演だった物で私も勿論大好きな映画です。
冷酷なルイ14世と仮面の男・フィリップ二役をディカプリオが演じている。
今ではアイドルから脱却し賞も獲る素晴らしい大人の俳優さんだが、この頃のアイドルの煌めきも夢のようで、映画スターの輝きを放っていて目映い。
映画は夢でなくては。
そんで、年老いたダルタニャンかっこいい。
なんと、ダルタニャンがルイ14世の本当の父との設定。王妃の恋人だったってことね。
すごい設定だ。
ちなみにフランス王家の王には側室は認められておらず
(国が認定する王の愛妾は認めている。もちろん庶子は認知されない)正妃が産んだ男児にしか王位継承権はなかったはず。
DNA鑑定が存在しない時代で良かったね。
こちらもネタバレは避けたいので、ここまでにしておこう。
仮面の男(1998) 映画情報-映画.com↓
ダルタニャンが出てきたので、関連で思い出すのはフランスの記録より記憶に残る名フィギュア・スケーター、フィリップ・キャンデローロ!!!
(もちろん好成績も残してますが。)
日本でも人気だったので覚えてる方も多いのでは?
彼が滑ると、黄色い声援が飛び交う。
名演・ダルタニャンのプログラムは今でも語り継ぎたい演目です。
あー、セクシー。
ほんとにかっこいいって、こういうことさ。
シュッとした現代の中性的な男の子もいいが、雄フェロモンプンプンの魅力には抗えない。
男の永久脱毛なんてどうでもいい。むしろ胸毛ボーボーであれ。
ゴールデン・カムイの源次郎ちゃん並に。
(ただの想像です。キャンデローロがボーボーなわけではないです。)
この発言フェミニストさんに怒られるかな?
NHK杯エキシビジョン キャンデローロ ダルタニャン↓
さて。「ブルボンの封印」は単行本化された際、加筆・修正が加わったので、単行本版は私には違和感があった。
なので、できれば文芸書版をオススメしたい。
写真でご紹介させて頂いた版の方ね。
30年位前に出版されていたものなのでもしかして初版版では増刷されていないかも・・・。
でも中古でオススメするのも悲しいし・・・。
と、悲しくなりそうなので詳しくは調べません(自分勝手)。
私は藤本ひとみ氏は文芸書(ハードカバー)のバックナンバーは中古で揃えて
(すみません。高校生だったもので。高価な文芸書は当時中古でしか手が出ませんでした。)
社会人になってから新刊は文芸書を買っていた。(褒めて。)
文芸書で新書を購入する、数少ない作家さんだった。
そのなかでも同作者の「預言者ノストラダムス 上下巻」は今でも思い出に残る大好きな作品です。
その題のとおり、預言者であるノストラダムスが出てくるのだけれど、フランスのヴァロア王朝2代目のアンリ2世妃、カトリーヌ・ド・メディシスに仕え、暗躍する話。
というより、暗躍するのはカトリーヌなのだが。
カトリーヌの裏の悪女っぷりが最高に面白い!
悪女と言うよりは喰われる前に喰ったまでのことなのだが。
後のカトリックとプロテスタントの戦争がどうやって起こっていくのか、そこからヴァロワ王朝の終焉とブルボン家への継承がどう起こるのかが暗に示してあります。
私の大好きな悪女、カトリーヌ・ド・メディシスについては、
「ぼくらが旅に出る理由3~ルネッサンスとメディチ家」という前述の記事でも触れているので、イタリアの歴史と、ルネッサンスに触れた上で、フィレンツェ観光のモデルコース(私はイタリアには行ったことがありません。)を作ったので、興味がある方はご覧くださいませ。
メディチ家の他にはイタリアの有名な家門、ボルジア家についてもちょっと触れてます。
塩野七生氏名著「チェーザレ・ボルジア 優雅なる冷酷」や惣領冬実さんの漫画「チェーザレ 破壊の創造者」も紹介してますので読んだことがない方は是非。
忘れちゃいけない、さいとうちほさんの「花冠のマドンナ」も。私のイチオシはコレ。
「ぼくらが旅に出る理由3~ルネッサンスとメディチ家」リンク↓
https://blog.hatena.ne.jp/satomi_mignon/satomi-mignon.hatenablog.com/edit?entry=4207112889905193613
この記事では触れてなかったのですが、上記事のメインの話のメディチ家
(カトリーヌの出身家門。カトリーヌ時代より大分さかのぼりますが)
の黄金期を描いた藤本ひとみ氏の「逆光のメディチ」も名著!!!
ロレンツォ豪華王と、若き日のダ・ヴィンチとされる人物が登場します。ボッティチェッリもちょっとだけ出ますよ。
是非併せてチェックしてみて下さい。
藤本氏の最近の本は歴史以外を書かれていたので、あまりチェックしていなかったのだが、また色々探してみようかな。
東日本震災で失ったので強制的に断捨離されてしまったのだが、今思うと私の蔵書って途轍もない量だった。
文芸書だけでも100冊以上とか、漫画に至っては1000冊以上は所有していたような。
漫画は中古へ売り、中古で買って新書で買ってまた売っての繰り返しで代謝はしていたのだけれど、よく床が抜けなかった物だ。
(安い本棚はゆがんでいたぞ。あとは段ボールに所蔵していたwww)
震災以降は小説を所有するのは文庫になってからに限定している。
ビジネスの文芸書は買ったらサッと読んでサッと売る。
漫画はネット。
何とか本棚ひとつで間に合っている。
本の所有欲を刺激しないよう、日々気をつけている。
本にいくら使ったのかなんて、野暮だから考えたことないけど・・・
車1台は買えちゃうかも知れない。確実に。
・・・考えるのやめとこ。
さて、今回は歴史小説に触れた。
やはり、悩みを追求するよりは、俯瞰して薄目でみる技を身につける上で歴史小説は体のいい現実逃避の良薬である。
要約すると、私の中でミステリ小説はおくすりで、歴史小説は現実逃避のスイッチだな。
ここで一首。
スイッチは 押したい時に 押せばいい 押すなというから 押したくなる
・・・毎度馬鹿馬鹿しい。すいません。
終わりにします。
今回のBGM
LUNA SEA
「END OF SORROW」
記事のタイトルでお気づきの方もいたかも知れませんね。
そう。あの名曲の名歌詞からタイトルを頂きました。
「いくせんのほしにだかれてぇ~~ロマンをさけび、つーづけてぇ~~」
です。
大河歴史小説を紹介するに当たって、脳内にとっさに流れてきた曲だったので。
歴史というより壮大な宇宙っぽい曲ですが。
「なぜうまれてきたのかぁ~~じぶんのこと、あいし、はぁーじぃーめーるぅーーー」
めっちゃカタルシスな歌です。
併せてどうぞ。
LUNA SEA「END OF SORROW」 MV↓
おまけ
写真が少ないので、最近宮城県亘理郡亘理町を散歩した際のレアマンホールをお納め致します。
何度か通ってる道なのに今年初めて気がついた!!!
そのせいで最近下を見ながら散歩しちゃってます。
はらこ飯大好き!!!
読書については、つづく、かも。
おしまい。